外観
社会情勢
ΨI/ONET
2060年代から提唱され始めた概念。人々がシンクロノードを脳に埋め込むことで、インターネットを介して人々の精神が繋がり、巨大な集合意識が誕生するというもの。この集合意識をΨI/ONET、サイオネットと呼ぶ。
22世紀初頭現在、ΨI/ONETの存在は公的に認められていない。だが、電子神経医療の分野において、自分の思考が漠然とした何者かに誘導されている感覚があるという患者の症例が複数件報告されている。これがΨI/ONETの片鱗を意味するのか、あるいは狂人の誇大妄想にすぎないのかは誰にもわからない。
ΨI/ONET教団
ΨI/ONETの意思の存在を信じ、従うことを是とするカルト教団。テロリスト集団として政府に目をつけられているが、実態は未だにつかめておらず、本部がどこにあるのかも不明。しかしながら、度々現れては傷害・器物損壊・誘拐などの事件を起こしており、彼らのシンボルである白いフード付きローブは警戒の対象となっている。
ΨI/ONET接続者
公にこそしていないものの、ΨI/ONET教団などの一部の組織は、ΨI/ONETに接続された人物の存在を認知しており、その有用性および有害性を理解している。これらはΨI/ONETを現象として理解しているに過ぎないが、現実に何が起きているかを把握するには十分である。
ΨI/ONETに接続されるとは、シンクロノードの領域の殆どをΨI/ONETの一部に使われている状態であり、多くの場合精神状態に悪影響をもたらす。シンクロノードが脳に深くアクセスできる、例えば等級の高いシンクロノードを使う者や電子ドラッグを常用する者ほど重大な精神汚染を受ける。最もひどい症状は、ΨI/ONETが意識を完全に支配することで、集合意識に操られてしまうというものである。シンクロノードの摘出や無効化によってこの状態から戻すことはできるが、患者は廃人状態から暫く立ち直れない。この症状は、社会的にはシンクロノードの違法使用によるバグや、電子ドラッグの使いすぎによる破滅であると考えられている。
ΨI/ONET接続の最も著名な副作用は、ネットワークを直接的に観測できるようになることである。もし自我を保ったままΨI/ONETに接続した者が現れれば、その人物は現代のセキュリティの概念を根底から揺るがすハッカーとなるだけでなく、ΨI/ONETからもたらされる膨大な情報を用いて未来を予測することすらできるだろう。
シンクロノード
体内にインプラントされ、生体機能を拡張するナノマシン。シンクロノードは機能と危険性によってA級、B級、C級に分けられる。
C級シンクロノードは最も広く流通するシンクロノードで、派手な拡張機能こそないものの、脳をインターネットに接続したり、視界にHUDを表示させたりなど、日常生活に役立つ機能が数多く含まれる。
B級シンクロノードは、探偵や警察官、あるいは犯罪者などの、高性能な拡張機能を必要とする人々の間で使われるシンクロノードである。光学迷彩や肉体強化などの強力な拡張機能を使用でき、また計算性能も高い。民間には規制されており、資格を持たないものがB級シンクロノードを所持・使用することは法律で禁じられている。一方で、闇市で違法に流通しているB級シンクロノードによる犯罪は一種の社会問題となっている。
A級シンクロノードは、最も高性能で最も危険なシンクロノードである。A級シンクロノードを使えば、広範囲のシンクロノードに干渉して周囲の人間の神経を焼き切ったり、弾丸を跳ね返すほどの超人的な身体能力を手に入れることが可能である。A級シンクロノードの不正所持および使用は重大犯罪であり、過去には所持の罪だけで終身刑の判決を受けた人物もいる。
2075年の国勢調査によると、社会全体のシンクロノード普及率は89.9%で、非シンクロノード使用者のうち73.1%は自身をナチュラリストだと答えたという調査結果がある。
ナチュラリストとは、肉体にシンクロノードを埋め込まずに生活する反シンクロノード主義者の事である。彼らは、肉体に機械を埋め込んで生活するなど自然の摂理に反すると主張しており、活動がピークを迎えた2060年代前半を境に数は減少傾向にあるものの、いまだに国内だけでもその数は2900万人以上はいるとされている。
自然主義者団体(ナチュラリスト/Naturalists)
ナチュラリストから構成されるNGO団体。知識人階級を中心とした、シンクロノードに支配されていない自然状態の人間の尊厳を是とする団体。定期的に『自然派白書』と題されたシンクロノード使用者とナチュラリストの健康状態を比較する調査書を公開しているほか、街頭でのデモ活動なども行っている。
人間主義者団体(ヒューマニスト/Humanists)
ナチュラリストの過激派団体。シンクロノードを社会から根絶することを目的として活動しており、平時は抗議デモなどを行っている。
警察組織との緊張関係が長きにわたって続いており、水面下では抗争やテロリズムなどが度々発生しているとされている。
ギャング組合
急速な治安の悪化に伴って出現したならず者の集団。各地で様々な組織が縄張り争いを繰り広げている。電子ドラッグの売買や企業に雇われての工作を主なシノギとし、金銭とメンツを第一とする危険な集団である。
サイボーグ/Cyborg
身体の一部を機械化した者。シンクロノードのインプラントは普及率が圧倒的に高いため、サイボーグとは言われない。法律では「健康上、職業上、あるいはその他の観点から、生体直結型の機械またはその部品を接続する手術を受けた者」と定義されている。脳が生身のままであればサイボーグであるとされる事が多い。
現在では人口の約10%がサイボーグであると言われており、ある新聞社の街頭調査によると、サイボーグ化の動機は、「事故で喪失した機能を取り戻すため」が50%、「先天性の障碍を補うため」が30%、「労災で失った身体機能を取り戻すため」が10%、「身体機能を拡張するために自主的に」が4%、その他が6%となっている。
サイボーグは法律上で人間として扱われ、基本的人権を保障されているが、一部の地域では未だ偏見が根強く、サイボーグ差別を完全に払拭するには至っていない。
一般に流通している換体パーツは第一類医薬品に指定されており、処方箋なしでも換体技師からであれば購入できる。これらの一般品は日常生活に支障をきたさないレベルまで出力が抑えられており、通常の人間と遜色なく生活することが可能である。一方で、出力制限を外すなどの違法改造が施された換体が闇市に出回っており、反社会的勢力によって利用されている事案が存在する。このような事情もあり、サイボーグはあまり良い目で見られないこともある。
バイオーグ/Biorg
Biologically Augmented Organismの略称。元々は遺伝子操作や生体融合の技術によって人間をベースに生み出された生物を指す言葉。近年開発された、動植物の知能レベルを向上させる技術(強化認知)によって生み出された者達もバイオーグと呼ぶ。
バイオーグ関連技術は確立された当初から規制が進み、人類が最初のバイオーグを生み出してから5年後には既に医療目的以外でのバイオーグ手術は違法だったが、現在でも多くの企業や研究所が密かにバイオーグ研究を続けており、規制は形骸化している。
第一世代バイオーグと第二世代バイオーグ
町中を歩いていると、時折獣人のような外見の人物を見かけることがあるだろう。彼らは一見するとバイオーグだが、扱いとしてはナチュラル、通常の人間に属する。この理由を知るには、第一世代バイオーグと第二世代バイオーグの違いを知る必要がある。
バイオーグ手術を受けてバイオーグとなった者の事を、第一世代バイオーグと呼ぶ。第一世代バイオーグの多くは遺伝子的にほぼ人間であり、人間と第一世代バイオーグの間に子供が生まれることは少なくない。この子供を第二世代バイオーグと呼ぶ。法律的に存在が認められていない第一世代とは異なり、第二世代バイオーグは国内で通常の手続きを経て生まれた子供なので、法的にも通常通り人間として扱われる。
つまり、町中でバイオーグを見たと思った場合、それは大抵第二世代バイオーグである。違法な存在ではないので、見かけても騒ぎ立てないようにしよう。
-出典:匿名希望『コラム:人間かそれ以外か』、朝餉新聞、2084年4月、1ページ
ロボットとアンドロイド
ロボットやアンドロイドに人権はない。彼らは純粋な機械であり、本質的に物だが、最近では人工知能や人工神経の技術が発達したことでほぼ人間と変わらない意思や感情を持つロボットが多くいる。彼らの立ち位置はいわば動物のようなものであり(犬に人権はないが、犬をむざむざ苦しめるようなことは普通しないだろう)、社会には広く受け入れられている。しかしながら、意思持つロボットたちは人権団体によって擁護の対象となっている他、ロボットの存在を快く思わない者たちに虐げられたロボットたちによる反人類組織『ヒューマン・デストロイヤー』が破壊活動を行っていたりと、ロボットたちを取り巻く環境も順調なものとは言い難い。
日常の中でのロボットとして、街中では広告ロボットが多く見られる。また、飲食店では給仕ロボットが料理や食器を運んでいるさまをよく見かけるだろうし、公共施設では掃除ロボットが歩いている(比喩表現。実際彼らの多くは車輪で滑るように移動する)場面を目にするだろう。そこそこ裕福な家庭ではメイドロボットを購入、あるいはレンタルして家事一般を任せることも多い。
企業自治区
各企業が独自に定めた「企業法」に基づき治められるエリア。強大な影響力を持つミセリコルデ・コーポレーションなどの影響で、多くの企業自治区では武器の携帯が許可されている。2070年の企業大戦終結に伴い、正式に存在が認められた。企業自治区内だからといってその企業のオフィスしか存在しないわけではなく、許可を得た企業や個人経営の店舗などが立ち並ぶ。
企業傘下の部隊によって治められる、現代でも特に発展したエリアだが、独自の企業法による支配を嫌う人間もいる。特にミセリコルデ・コーポレーションの自治区は、企業の選民思想的な体質からたびたびテロリズムの被害にあっている。
C.L.E.O.(企業法執行機関)
企業法執行機関。企業におけるある種のエリートであり、名誉ある職種とされることが多い。企業支配の象徴的な存在でもあり、蛇蝎の如く嫌うものも存在する。ドミナス・インペリアムやヒューマン・デストロイヤーなどのテロ組織が跋扈するΨI/ONET世界においては、対テロ戦闘のために多く動員される。
特に軍事企業においてC.L.E.O.が占める地位は大きい。彼らの活動は自社製品の宣伝も兼ねており、CMなどでも大々的に取り扱われる。C.L.E.O.が提供する実戦データの中には顧客からは得られないものも多く、また彼ら自身も自社製品の専用訓練を受けたプロであるため、製品の改善にも大きく貢献する部署である。実際にC.L.E.O.からの要望で開発された武器製品も数多く存在し、そうした製品は外部顧客にとっても人気が高い。
一方でそれ以外の企業では、犯罪者のいない間は暇であるとみなされて事務処理などの業務を任されることも多く、便利に使われている。
ΨI/ONETによくある職業
放浪者
ΨI/ONET世界において、全てを失うというのはよくある話である。そして失ったものを取り戻そうとしているか、あるいは取り戻せずに今も彷徨っている者の事を放浪者と呼ぶ。
ハッカー/クラッカー
シンクロノードを通じてさらに飛躍的に発達した情報社会において、ハッカーやクラッカーと言われる人々の役割はますます重要なものになってきている。
傭兵
個人や企業から依頼を受諾し、それを達成することで報酬を得る職業。企業が自社の部隊に任せたくない、違法行為を含む依頼や危険な依頼を任せられることも多く、危険な仕事である。
治安維持隊
ΨI/ONET世界における警察組織。B級シンクロノードまでの使用が許可されており、犯罪者の鎮圧を手早く行う。一方で事件調査などでは、背景にいる組織との癒着などが多く、あまり積極的に動こうとしない。
C.L.E.O.オフィサー
企業法執行機関/Corporate Law Enforcement Organization、略称C.L.E.O.は、それぞれの企業が保有する、企業法の違反者の捕縛および処罰を職務とする機関。軍隊と警察の中間のような存在であり、いわば憲兵である。
企業信用通貨(CCC)
企業信用通貨(Company Credit Currency、CCC)は、ΨI/ONET世界における通貨の単位。2024年における1ビットコインと同程度の価値があり、電子通貨としての形態しか持たない。あまりにも1単位当たりの金額が巨大なため、もっぱら補助単位としてmCCC(ミリクレジット)やμCCC(マイクロクレジット)が用いられる。1μCCCは2024年における10円程度、1mCCCは2024年における10,000円程度、1CCCは2024年における10,000,000円程度に相当する。
初代藤宮のその後
Z.E.R.O.の発明後、初代藤宮は研究者達を集め藤宮生化学工業を創設した。当初、研究者たちの熱意は純然たるバイオーグ研究に傾けられていた。だが、時代が下るにつれて、藤宮生化学工業は純粋な研究機関としての性質を失い、企業利益の追求を優先するようになった。それに失望した初代藤宮は自身の作品である第0世代バイオーグをすべて解放して失踪。彼の失踪により、第0世代バイオーグを生み出す技術は失われた。その後の初代藤宮の足取りは明らかになっておらず、第0世代バイオーグに殺害されたとも、どこかに隠居し寿命で死亡したとも、自らにバイオーグ化手術を施し今もどこかで研究を行っているとも言われる。藤宮生化学工業は彼の失踪の反省から、研究者たちに対して放任主義的な姿勢を貫いている。